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2冊の歌集

少し前の事であるが、2冊の歌集をよんだ。いづれも若い歌人の歌集である。俺も趣味で作歌をしているので、興味もあってよんだのだが理解できない歌も多かった。どこか前衛的でもあり、こころの中を詠んでいるだけに、俺のような古い頭の人間には理解できないものが多かった。

その1冊が「歌集 滑走路」。実はこの若き歌人は17年に32歳でこの世を去った・・・自死であった。角川全国短歌大賞準賞はじめ、NHK全国大会で特選選ばれたり、近藤芳美賞など受賞し、期待された歌人だっただけに、彼の死を惜しむ声は強い。今、この歌集を元にした映画も作られていたのであるが・・・

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    屋上で珈琲を飲む かろうじておれにも職がある現在は

    今日も雑務で明日も雑務だろうけど朝になったら出かけてゆくよ

    非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている

こ歌集の”あとがき”にもあるように、近所の書店に俵万智さんが来てのサイン会があったようだ。その短歌を読んでこれなら自分でもかける、そう思ったと言う。やがて、様々な事に悲鳴を上げていた自分にとって、短歌はこころの叫びを受け止めてくれる器だったとか。そして、歌の数々を投稿した。

彼は中高一貫校でいじめにあった。さらには職場は非正規雇用、その中であえぐ苦悩は現代の若者の苦悩を代弁し作歌を続けた。その才能が芽を開きかけた時・・・彼は自分の歌集をみることなく、旅立った・・・彼の短歌は口語体、それはやはり俵万智さんに似ている。その詠みぶり故に率直な短歌が多い。まるで叫びである。

    きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい

”きみ”は=僕であり作者だ。だが、用意された滑走路を走って、夢を広げることなく、帰路のない道に翼を向けた・・・

 

次の歌集は今年5月に発行された「飛び散れ、水たち」で、これを知ったのはNHKの朝のニュースの枠内で紹介されたものだった。

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彼の名は近江瞬、89年生まれ。あの東日本大震災をテーマにした歌集だ。彼の短歌は心象詠というべきだろう。故にじっくりと読まないとなかなか理解できない部分がある。

    僕たちは世界を盗み合うように互いの眼鏡をかけて笑った

    ふと君が僕の名前を呼ぶときに吸う息も風のひとつと思う

    学校の屋上だけが透明な聖域として空を集める

彼の短歌も口語体だ。いわゆる話し言葉が歌を紡いでいる。一般的には叙景歌・抒情歌が多い中で、この一冊は異彩を放っている。日常を非日常的に捉え、そしてテーマを昇華していく。そしてまた、その視点は若者の視点だ。被災後に東京から帰った故郷、その彼の目に映ったのは単純な日常用語では言い表せなかったのだろう・・・

哀しいとか悲しいとか、風情を憂えるなど・・・こころを抑えにおさえた一首一首にはじわっと来るものがある。実はこの彼も発災当時、仙台に暮らしていた俵万智さんのミニ歌集「あれから」に、古本コーナーで出合っている。だから、彼の作歌態度も同様に俵万智さんの影響を大なり小なり受けていると言ってもいいだろう。

     三月十二日の午後二時四十六分に合わせて一人目を閉じている

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さすがに若い方々の短歌は瑞々しい。表現も活き活きしている。短歌はこころの叫びである。それを思うと羨ましい限りだ。だが、年を取っていくのは自然の摂理だ、致し方ないし俺は俺の歌で生きて行くしかない・・・

   体力も知力・精力うすらぐを老とは言うも気力で生きん

   ぐいと呑む夕べの酒に明日の日の気力に代えてわれを慰む

   

 

 

 

 

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コメント

短歌と言っても形態が違うのですね。57577ではなく、どこか詩のような感じですね。これはこれでいいのでしょうけれど、短歌はやはり句体がいいですね。でも、口語体も耳への響きがいいですね。

投稿: 京じじ | 2020年12月 3日 (木) 08時35分

こんにちは。
心象風景を詠まれたりですが、
よく理解できないことがあります。
日経新聞の日曜日にもお二人の選者の方がいらっしゃるのですが、選ばれるお歌が夫々違いますし口語体も選ばれる時代なのですね!
大将さまのお歌は素晴らしいです。

投稿: マコママ | 2020年12月 3日 (木) 14時09分

京じじ 様

コメントを有難うございます。
現在は和歌と違って、57577であれば短歌になります。ただ、心象詠だとなかなか分かりづらいものがあります。題材は新しいものであっても、オーソドックスな詠み方が俺は好きです。

投稿: でんでん大将 | 2020年12月 3日 (木) 23時01分

マコママ 様

コメントを有難うございます。
個人個人で詠い方が違い、それが個性でもあります。ただ、心象詠はなかなか理解が出来ないです。それよりは口語体の方が分かりやすいと思います。でも、それは重みがないようで・・・
俺の短歌は即興みたいなものです・・・

投稿: でんでん大将 | 2020年12月 3日 (木) 23時05分

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