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「八重子のハミング」

にて検査を受ける日であった。土曜日ということもあってか、は混雑していた。それに、時折、子どもの泣き声も待合室には聞こえてくる。インフルエンザの予防接種のようだ。

俺は検査の前に文庫本を広げた・・・

俺は本のページを広げ、右手には鉛筆を握っている。そして、その手を時々動かす。人様は何をしているのかと、不思議そうに見ている視線を感じた。俺は、本の活字に目をやりながら、気に入った文章や会話、他に気になったりする部分に鉛筆で傍線をひくのだ。

昨日から俺が読んでいるのは・・・「八重子のハミング

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先月であったか、この本が映画化されるということをNHKで知った。内容にもいささか触れていたので、早速アマゾンに注文した。ただし、俺と同じような考えを持っていた人が多かったのか、注文してもなかなか届かなかった・・・

だから結局届いたのは、注文後、10日余りのことだった。

待合室・・・俺はページをめくりながら、胸に込み上げてくるものを感じていた。その思いを人様には気付かれないように、洟をすすり上げた・・・何度もなんども、そして・・・

夫婦とはこのようなものか、人を介護するとはこのようなものか、帯にもあったのだがまさしく現代版「智恵子抄」であり、目頭があつくなって来る・・・

作者は元学校の校長先生だ、その後、市の教育長になった陽(みなみ)氏で、ガンの手術を三度もしている。彼の妻も学校の先生で、ふたりは離島の学校で知り合い結婚した。その妻が・・・アツツハイマー病に。

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著者は結局、その妻の介護のために仕事を辞める。従って、本著は彼の奮戦記ともいうものだろうが、単にそれだけに留まってはいない。著者は、講演依頼があれば妻を同行させ、妻を見世物のようにして活動する。

著者の短歌に・・・

 講演に手を携えておちこちに妻曝けおるわれは鬼畜か

なぜか!それはその病気を理解して頂きたい、病人に何とかやさしくしてほしい、その思いが妻を連れての講演だったようだ。

アルツハイマー病とは脳が萎縮していく病気だという、だから少しづつ変化をもたらしていくといい、罹病すれば7~8年で亡くなるらしい。しかし、著者は懸命な介護をした結果だろう、妻八重子さんは11年も長らえたという。

おそらくこの本を目にすれば、目頭を押さえない人はいないだろう。あたり一面に尿びたし、あるときは自分の糞を食べている妻・・・それでも叱る事無く、妻を介護する姿はもうなんと言えばいいのだろう・・・

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今春に買った椿、小さい苗木なので今、1輪だけ咲いている。品種名を「参平つばき」といい、年に2度咲くと言うので求めたものだ。花にはこのように、1年に2度咲くものは椿の他にもある。

だが人生は一度だ。年若くして生を終える者、年若くして病気を得る者、そのような若くして旅立つ者も少なくはない。花を咲かせる前に旅立つ者もいる。

八重子さんはアルツハイマー病を得た。時には健康な人からみれば”失敗”にも見えるだろう。でも、八重子さんの世界と違うことなのだ。いつも歌好きな八重子さんはハミングだ。歌詞はでないが、メロディだけは口に出る。

200ページ余りの文庫本、でも、学ぶ事は多い1冊だ。

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コメント

常に何かを得ようとする、読書家らしい大将ですね。

高齢者の多くが罹患すると言われている、認知症。まだら認知症の時の自分が失われていく恐怖、その人を介護する者、いずれも将来に絶望感が漂う生活。
その中で著者の行動はすごいものがありますね。

投稿: 京じじ | 2016年12月 4日 (日) 07時34分

興味深い本ですね。
最近、本を読むひまがない~><
勉強にもなりますよね。
人それぞれの見方と感じ方がある。
骨折して初めて、人のやさしさが分かった。
だから、人に優しくしようと・・うちの主任。。。
今ですか??と私は思った(・_・)エッ....?
本題から離れてますが~この本、主任に進めよう。

投稿: ヒナタ | 2016年12月 4日 (日) 09時40分

うまく言葉にできませんが
深く考えさせられる内容でした。

私も読んでみようと思いました。

投稿: ホシノ | 2016年12月 4日 (日) 12時32分


京じじ 様

涙しました・・・いづれは通る道かと思うと、いたたまれませんでした。この1冊に・・・・。

投稿: でんでん大将 | 2016年12月 4日 (日) 23時55分


ヒナタ 様

俺も最近は本を読む時間がなかなかありません。それに、本を広げると眠気が出てきて・・・でも、きょうの1冊は涙なしでは読めないでしょう・・・時間も忘れて没頭する事に・・・。

投稿: でんでん大将 | 2016年12月 4日 (日) 23時58分


ホシノ 様

おふくろが認知症を併発し、施設にこの9月から入居しています。これまで長い時間、介護をし続けてきましたが、限界でした。
この1冊から、改めて「愛」とはということ、感じました。

投稿: でんでん大将 | 2016年12月 5日 (月) 00時02分

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