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死刑囚・島秋人の短歌

元刑務官・坂本敏夫氏の「死刑のすべて」を読んだ。さすが元の刑務官ゆえ、死刑囚の素顔、日常生活、執行の時・・・・など赤裸々に描写されている。氏は映画「13階段」のアドバイザーも務めただけにこの書の内容も重い。

さて、この書の最終章は死刑囚・島秋人に触れている。執行の任に当たった刑務官に「彼の執行はこの上もなく悲しかった。しかし、この手で送ることができて幸せだったと思っている。そう思わなければとても耐えられない」と今でも語られる、その死刑囚が島であった。

彼は幼少期、病弱で結核やカリエスにかかり7年間をギブス育ち、従って成績は最下位、周囲から馬鹿にされ、貧しさゆえに非行と犯罪を犯し、更に25歳の時、飢えから農家に押し入り家人との争いから主婦を殺害してしまう。そして、獄舎に・・・。

獄舎で彼は中学時代、たった1度「絵は下手だが構図がいい」と褒めてくれた先生に手紙を書いた。折り返しその先生から返事・・・それに先生の奥さんから短歌3首が添えられていた。このことから彼は、死刑前夜まで贖罪の短歌を詠み続けた。それをまとめたのが「遺愛集」である。

     この澄めるこころ在るとは識らず来て 刑死の明日に迫る夜温し

この1首は処刑される前夜のもの。犯罪者とは思うものの哀切極まりない。思わずこみ上げてくるものがある。俺は「遺愛集」を初めて読んだのは何歳のことであったか。おそらく二十歳過ぎのことだと思う。

   世のためになりて死にたし死刑囚の 眼はもらひ手もなきかも知れぬ

   独り身の老父が洗ひて繕ひし 古ジャンパーを獄にまとひぬ

   被害者に詫びて死刑を受くべしと 思うに空は青く生きたし

   妹の嫁ぎし事をよろこびつつ われに刑死の日は迫るなり

死刑の存廃論が激しく論じられ、外国では廃止の方向が重きを為しいる昨今、俺は未だ根強い国民の多数と同じく、廃止論には合点がゆかない。このところ、再び凶悪な事件が相次ぐなかで、やはり廃止という論には躊躇する。だが、この島の事件の背景には同情すべきものもいくつかある。また、「砂の器」や「半落ち」の背景にもある病気のことを考えると、積極的な存続論を肯定は出来ない・・・・・・・・・・・。

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